透析患者さんの栄養指導
2010.07.15 Thursday [09:31]
血液浄化療法の実習、最後は透析患者さんにおける栄養指導です。
今年も管理栄養士の方を招き、講義を行い、そして実際の透析患者さんの食事を作ってみました。

透析患者さんの食事(以下、透析食)は通常の食事とは違い様々な工夫がされています。
今回の調理実習では、野菜orフルーツゼリー、そしてチキンカレーをつくりました。
今年も管理栄養士の方を招き、講義を行い、そして実際の透析患者さんの食事を作ってみました。

透析患者さんの食事(以下、透析食)は通常の食事とは違い様々な工夫がされています。
今回の調理実習では、野菜orフルーツゼリー、そしてチキンカレーをつくりました。
慢性腎不全の患者さんは腎臓からのカリウムの排泄ができません。
カリウムの過剰摂取は不整脈を誘発し、最悪なケースとして心臓の動きが停止します。
カリウムの値が高くなる原因として食物中に含まれるカリウムの過剰摂取が上げられます。
そのため、調理の段階でカリウムを下げる工夫が必要となります。



カリウムは細胞内に多くふくまれるため、細胞を壊してカリウムをあえて細胞内から細胞外へ出し、流水で軽くすすぐ。また、カリウムは水溶性のため野菜をゆでて、そのゆで汁を一端捨てて調理を行うなどをすれば、カリウムを多く摂取せずに食事を取ることができます。

また、透析患者さんの食事指導で重要なことが水分制限と塩分制限があります。
水分と塩・・・一見つながりは内容に思えますが、実は深くつながっています。
慢性腎不全の患者さんは腎機能が低下しているため、尿が出にくく、飲水した水分がそのまま体内へ蓄積されます(汗や呼吸で一部は排泄される)。
よって、体に水分が蓄積すると血液が希釈され濃度(Na濃度)が低下します。すると体は塩分をほしがり、必然的に塩分を多く取ります。
血液が希釈された体に塩分を補給してすぐに、適正な濃度になるわけでなく、時間差が生じます。その時間差の間にも塩分を摂取し続けると・・・・気がついた時には過剰に塩分を摂取したことに気がつきます。それが、口渇。すなわち喉が渇いた状態になります。


喉が渇くと、ヒトはどういった行動をするでしょうか?
もちろん、体が水をほしがります。塩分の過剰摂取により、水分の摂取。
結果的に、
水分摂取→Na濃度希釈→塩分摂取→Na濃度上昇→水分摂取→水分摂取→Na濃度希釈→塩分摂取・・・・・・・・
まさに、負のスパイラル状態です。



そこで、透析患者さんは水分制限、塩分制限を同時に行わないといけません。
今回調理実習でも使用した塩分はごく少量。
ただ、塩気の足らない食事はメリハリがないため、今回はカレー粉を多く使用しスパイスなカレーにしました。
チキンカレー食べ始めると非常に辛いという声があるのですが、塩分を少なめにしているため食べ終わっても体が水をほしがりません。
学生にとっては不思議な感覚です。



透析患者さんの栄養指導はカリウム、水分、塩分以外にもあります。
それを含め、食事指導のポイントをまとめます。
・透析食は、食事制限ではなく食事療法というニュアンスでの指導が望ましい。食事制限という意識が強い患者ほど食事量が少ない傾向がみられ、エネルギー不足になりやすい。
・透析食は特別な献立や料理というものはなく、健常者の食事(料理や献立)に味付け、調理のしかた、材料を注意するだけでよいことを強調して指導する。
・リンの指示量を守ってもらう。
・エネルギー不足を起こさないことが重要である。
・一般的に、水分は3食の食事から800〜1000mL摂取される。
・具体的な指導として、汁ものはとらない、豆腐は水分を少なくして(押し豆腐)調理する、お浸しなどのゆで野菜は、よく水をきる、味付けは薄く(塩分量だけではなく。濃い味付けはのどが渇き水分を欲する原因となる)、乳製品は牛乳ではなくヨーグルトにするなど、具体的に指導する。
・カリウム制限のため、野菜、芋類はゆでて調理する。
・果物はコンポート、缶詰を利用する。生の果物は、透析時に持参して食べることは可能(透析中に喫食)である。
・外食・中食(コンビニエンスストア・スーパーマーケットのテイクアウト食品)に注意する。
・外食でのどんぶり物(カツどん、天どん、うなどんなど)は、1食で5〜7gの塩分を含むので控える。
・外食・中食は一般的に濃い味付けが多いので、テーブル調味料(しょうゆ、ソース、塩)、付け合わせの加工品(漬け物、つくだ煮、練り製品)も控える(食べない)。
・スナック菓子類は油を多く使用しているので、エネルギー補給にはよいが、リン・塩分含有量が多いので控える。
・チョコレートを使用した菓子類は、カリウムが多いため注意する。
・アルコール摂取については医師の指示に従う。肝障害のある患者は禁酒が望ましい。糖尿病患者はエネルギー過剰や血糖降下薬の増強作用に注意する。

臨床工学技士は臨床の現場にて直接調理をすることはありません。
しかし、今回の調理実習を行うことで実体験を元にして患者へ直接指導を行うことができます。
臨床の現場では患者さんの状態を検査データの数値で判断し、それを元に患者指導を行いますが、患者さんにとって食事をすることは生きていく上でも大切であり楽しみなことでもあります。
そこで検査データの数値だけではなく、食事摂取という視点からも患者さんの状態を把握できれば、例え臨床工学技士という職種であっても、患者さんの接し方は変わってくると思います。
食事制限を行ってもらい、効率の良い透析を行うことがベストですが、しかしある程度の患者さんの食事に対するストレスを軽減させ、よい医療を提供することが大切ではないでしょうか。


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