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2025.09.01

臨床工学科

高山病の本当の理由|「空気が薄い」は間違い?

先日、木曽駒ヶ岳に登った際、ゆっくり歩いているのに息が苦しくなりました。

なぜそうなるのか、高所は「空気が薄い」からだとよく言われますが、これはどういうことなのでしょうか?

実は、「空気が薄い」という表現は正しくありません。

私たちは空気中の酸素を吸って生きています。

地上の酸素濃度は約21%ですが、実は木曽駒ヶ岳(標高2,956m)や富士山頂(標高3,776m)でも、酸素濃度は同じ約21%なのです。

空気自体は薄くなっていません。

では、なぜ息が苦しくなるのか?

その理由は、酸素分圧が関係しています。

 

酸素分圧の低下が引き起こす息苦しさ
酸素分圧とは、簡単に言うと「空気を構成する成分のうち、酸素が持つ圧力」のことです。

地上では、空気全体を押しつぶす力が強いため、酸素も強い力で肺に押し込まれます。

しかし、標高が上がると、この大気圧が低くなります。

<大気圧>
○平地 (海抜 0m):760mmHg
○木曽駒ヶ岳(標高 2956m):531mmHg
○富士山頂 (標高 3776m):475mmHg

この気圧の低下によって、肺に酸素が送り込まれる力、つまり酸素分圧も下がります。

<酸素分圧>大気圧×21%
○平地 (海抜 0m):760mmHg×0.21=159.6mmHg
○木曽駒ヶ岳(標高 2956m):531mmHg×0.21=111.5mmHg
○富士山頂 (標高 3776m):475mmHg×0.21=99.8mmHg

ご覧の通り、富士山頂の酸素分圧は平地の約6割ほどにまで低下しています。

 

酸素飽和度と高山病
この酸素分圧の低下が私たちの体にどう影響するのでしょうか?

私たちの体は、酸素分圧が低いと、血液中の酸素を取り込む効率が悪くなります。この血液中の酸素量を酸素飽和度(SpO2)といい、血中のヘモグロビンと結合した酸素の割合を示すものです。

<推定される酸素飽和度>
○平地 (海抜 0m):95~100%
○木曽駒ヶ岳(標高 2956m):85~95%
○富士山頂 (標高 3776m):80~90%

このように、標高が高くなるにつれて酸素飽和度は低下し、80%台まで下がると、平地では呼吸不全と診断されるレベルです。これが、高所で息苦しくなる本当の理由です。

 

高山病になったら、無理をしないで下山を!
低くなった酸素飽和度に対応できず、様々な体の不調が現れるのが高山病です。もし、頭痛や吐き気、だるさといった症状が出たら、無理をしてさらに高い場所を目指すのは非常に危険です。すぐに下山し、酸素分圧の高い場所に戻ることで、症状は改善に向かうことがほとんどです。

高山病は誰にでも起こり得ます。自身の体と向き合い、安全な登山を心がけましょう。

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